2007年11月17日土曜日

土と水

 昨日書いた井上道義氏に似た名前だが井上博義というジャズ・ベーシストがいる。現在は、小さなジャズ・バーを経営していて、毎晩ライブがある。この人のCDで「土と水」というのがあり、ベースの井上さんとサックスの藤井政美さんとのデュオの演奏である。これはジャズとオーディオ好きである萩焼の十二代目坂高麗左衛門氏のアトリエホールで録音されたもので、オーディオ的になかなかの優秀録音である。

 元々坂高麗左衛門は、豊臣秀吉の文禄・慶長の役の際に大阪に招致された朝鮮の陶工・李敬の末裔であり、毛利氏の萩移封後、萩城下松本村に開窯し、二代藩主綱広公より“高麗左衛門”の名を賜った。以来、坂高麗左衛門と名乗り、萩焼の宗家としてその伝統を長く受け継いでおり、十二代目坂高麗左衛門は、坂家伝来の萩焼に自らの専門分野であった日本画を施し、萩の陶芸界に新風を巻き起こしたとされている。

 その十二代目坂高麗左衛門氏が亡くなったのが2004年7月26日であった。新聞でそのニュースを読んで不可解な印象を持った覚えがある。坂氏は7月22日に知人数人と飲んだ後、深夜0時過ぎに友人二人と自宅に帰宅。その7時間後に自宅敷地内で倒れているのを友人が発見し、119番通報したが、意識不明のまま26日に死去。自宅2階からの転落による脳挫傷が原因の事故死として処理されたということだ。 推理小説のネタになりそうな事故である。

 長い間、井上博義さんのジャズ・バーに行っていない。これはジャズをあまり聴かなくなったということもあるが、もうひとつ理由がある。自宅を建てる際に本格的なオーディオ装置を買うことにし、井上さんからある店を紹介された。そこはオーディオマニアが集う店であり、メーカーの製品をそのまま売るのではなく、それを改造してよりグレードを高くして売るという商法であった。機器をつなぐケーブルなどのオーディオアクセサリー類もびっくりするくらい高額であった。改造なしで機器類を定価で買って、ふつうのケーブルを使ったときの2倍くらいの値段になる。さらにそこでやっているクライオ処理というのが理解できなかった。これは機器やケーブルをマイナス100度以下に冷却すると音が良くなるというものだが、理解不能であった。オーディオ暦の長いマニアがよく分かった上でこの店で買うのならばよいが、素人が買うような店ではないと思った。結局その店では買わなかったのだが、断るときにいやな思いもした。そのために井上さんのジャズ・バーに行きづらくなり、その後一回も行っていない。だがもうそろそろ行ってもいいかなという気はしている。

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